こんにちは、20年投資家のラックです。
今回は、2025年7月31日に発表された東京エレクトロン(TEL)2026年3月期 第1四半期決算が発表となりました。
東京エレクトロン(TEL)と言えば、半導体製造装置で世界3位の半導体関連企業となります。
時価総額は約13兆円で、レーザーテックの約10倍の規模を誇ります。
私の主力銘柄である**レーザーテック(6920)**にどのような影響を与えるのかを、投資家視点で徹底的に解説していきます。

決算のポイント|TELは業界をリードする堅調成長
東京エレクトロンの2026年3月期Q1(4〜6月期)決算は、以下のとおり好調でした。
項目 | 実績 | 前年同期比 |
---|---|---|
売上高 | 5,395億円 | +14.2% |
営業利益 | 1,410億円 | +5.3% |
純利益 | 1,077億円 | +18.1% |
営業利益率 | 約26.1% | ▲1.7pt(前年27.8%) |
特に注目すべきは、売上・利益ともに2桁成長を維持しており、半導体製造装置の需要が回復し始めている兆しが感じられる点です。
業界全体への安心感が広がる
TELは、リソグラフィ(露光)や成膜・エッチングといった前工程装置で世界トップクラスのシェアを持ちます。このTELが堅調な決算を出したことで、半導体製造装置業界全体への安心感が広がります。
では、検査装置メーカーであるレーザーテックにはどのような影響があるのでしょうか?
レーザーテックへの影響|ポジティブだが即効性は限定的
✅ ポジティブな点
-
TELの業績好調は、製造工程の投資拡大を示唆しており、その前後工程に位置する検査工程(=レーザーテックの領域)にも資金が回る可能性が高い。
-
TELとレーザーテックは、EUVや将来のHigh-NAリソグラフィへの対応という共通テーマを持っており、業界構造の回復は間接的にレーザーテックにも恩恵。
⚠ 注意点(中立材料)
-
TELは主にDRAM・ロジック分野の前工程装置が中心。レーザーテックが主力とするEUVマスク欠陥検査や次世代検査装置との直接的な業績リンクは薄い。
-
営業利益率が若干低下しており、業界全体にコスト圧力が残っている兆候も。
株価への影響予測|短期は限定的、中長期には追い風
時間軸 | 影響度 | 内容 |
---|---|---|
短期(数日) | ⭐⭐ | TEL連れ高の可能性あり、業界安心感でプラス材料に |
中期(数ヶ月) | ⭐⭐⭐ | 半導体設備投資の復活が鮮明になれば、レーザーテックにも波及効果 |
長期(3年超) | ⭐⭐⭐⭐ | EUVおよびHigh-NAの普及により、TELとレーザーテックの連携価値が増す可能性大 |
ラック戦略に与える意味|静かな追い風
私が実践している集中分散型投資「ラック戦略」において、レーザーテックは主軸中の主軸です。今回のTEL決算は直接的な材料とは言えませんが、
「製造装置の回復=半導体設備投資の再加速=検査装置への波及」
という構図が期待できるため、長期的にはポジティブな示唆を含むと判断しています。
決算直後に慌てて売買する必要はありませんが、8月7日に控えるレーザーテック自身の決算に向けて、地合いを整える一助になるかもしれません。
悲観的な決算に見えるが、私はポジティブに捉える
悲観的に見える部分
① 営業利益率が低下している
-
前年同期:27.8% → 今回:26.1%
-
「増収でも利益率が下がっている=価格競争が激化orコスト高」
② ガイダンス(通期見通し)が強気すぎる
通期の業績見通し据え置きで「楽観的すぎる」「下方修正のリスクあり」との懸念。
③ 業界全体の回復が本格的でない
「TSMCもまだ慎重」「DRAMも明確な復活シグナルは出ていない」などの慎重論。
④ 株価に織り込み済み、出尽くし感
既に株価が戻ってきていたため、「材料出尽くし」で売られるのではという見方。
私の評価が悲観に傾かない理由
-
利益率低下は「悪化」ではなく「正常化」
-
一部の装置や納品タイミングによって変動は当然であり、構造的に赤字に転落する兆候は見られない。
-
-
売上・利益の絶対水準は堅調
-
景気底打ちの初期段階では「先行投資」が利益を圧迫するのが常。この段階で増益なら十分合格点。
-
-
レーザーテックとは異なるビジネスモデル
-
TELは装置メーカーであり、顧客と価格交渉が発生する。
-
レーザーテックは独占的な検査装置を持つため、価格決定力が強い。TELと同じ視点で悲観するのは筋違い。
-
レーザーテックと東京エレクトロンは“工程は違えど、同じ方向を見ている
-
東京エレクトロン(TEL)は、「作るための装置(成膜・エッチング・リソグラフィ等)」を手がける会社。
-
レーザーテックは、「作ったものを検査・保証する装置(EUVマスク検査・欠陥検査)」を担う会社。
つまり、プロセスの前半を担うのがTEL、後半を担うのがレーザーテック。この2社は直接のライバルではなく、同じ半導体前工程の中で“補完関係”にあるのです。
TELの好決算は、業界全体に「投資再開ムード」が出てきた証拠
TELの売上・利益が2桁成長を見せたことは、以下のように解釈できます:
-
顧客(TSMC、Samsung、SKなど)が装置投資を再開し始めた
-
言い換えると、「半導体の需要回復を前提にした設備投資が、ようやく動き始めた」という合図
ここで重要なのは、
製造装置が売れ始めたということは、検査装置(=レーザーテック)への投資も遅れて付いてくる
という点です。装置投資の回復は、検査工程にも遅行して波及するのが一般的です。
ラック戦略との関係
ラック戦略(レーザーテック・エイピア・クダンの中長期集中分散)にとって、この決算は以下の意味を持ちます。
-
レーザーテックの事業環境が好転しつつある兆し
→ 半導体設備投資再開により、EUV/High-NA関連投資が今後具体化しやすくなる。 -
相場全体の「出尽くし感」や「悲観論」を冷静に受け止める軸になる
→ 短期ノイズに惑わされず、“3年戦略”を続ける判断材料として使える。
おわりに|次の焦点はレーザーテック決算
今回の東京エレクトロン決算は、半導体業界の地合いを支える“静かな追い風”となる内容でした。
東京エレクトロンが「設備投資が動き始めている」と教えてくれたことは、「レーザーテックの出番が近づいているという予兆」と捉えるべきです。
次なる注目は、2025年8月7日発表予定のレーザーテック本決算です。ここでEUV/High-NA関連の成長戦略や新たな受注が示されれば、一段と株価の再評価が進む可能性があります。
私の「ラック戦略」は、そうした成長期待を長期で信じてホールドし続ける戦略です。今後も、地合い・企業業績・技術動向を丁寧に見極めながら、投資の軌道修正を検討していきます。
コメント