営業黒字化は3度目の正直か、それとも単発か
長らく「技術力は世界レベル、しかし数字が伴わない」という評価を受けてきたクダン。
そんな同社が、2026年3月期第1四半期で見せたのは、小幅ながらも売上の増加と、赤字が常態化していた営業損益での黒字化の兆しでした。
もちろん、絶対額だけを見れば派手さはありません。けれどもこれは、長年の投資と開発の積み重ねが少しずつ形になり、事業としての“回り始め”を感じさせる変化です。
しかも、同じ日に発表された次世代デジタルツイン「Kudan PRISM」正式リリースは、このタイミングを象徴するかのようなニュース。
Kudan PRISMは、これまで培ってきた空間認識技術を、物流・建設・製造といった産業の現場で即使える形にパッケージ化したもの。
短期的に株価を大きく動かす材料ではないかもしれませんが、中期的な成長の絵をより鮮明に描ける一歩です。
地味に見えるかもしれない1Qの数字と、この新たなプロダクトの始動。
この2つが同時に揃った今期初決算は、クダンにとって「まだ小さいが確かな前進」を刻んだ四半期だったといえます。
決算ハイライト
指標 | 実績 | 前年同期比 | コメント |
---|---|---|---|
売上高 | 1.27億円 | +17.0% | 既存顧客の案件継続と新規ライセンス契約で増収 |
営業利益 | 0.09億円 | ―(黒字化) | 研究開発費の効率化と売上増が寄与 |
経常利益 | 0.10億円 | ― | 為替影響軽微、本業利益の押し上げが主因 |
四半期純利益 | 0.08億円 | ― | 営業黒字化に伴い純利益も黒字に転換 |
売上は1.27億円と依然として小規模で、事業規模の観点では「まだ投資段階」の域を出ません。前年同期比+17%の増収はポジティブですが、この成長率が今後数四半期継続できるかは未知数です。
今回の営業利益は約9百万円ですが、例えば売上が今期水準から10%減少(約1,200万円減)しただけで営業利益は簡単に赤字に逆戻りします。さらに、研究開発費を前年並みに戻した場合は、売上が横ばいでも赤字に転落します。
過去の事例では、クダンは2024年3月期第3四半期に営業黒字を計上しましたが、その翌期には再び赤字に戻っています。つまり「黒字化しました」で終わらせず、最低でも3〜4四半期連続で黒字を維持し、かつ売上成長率を15〜20%台に保つことが、本当の意味での業績安定化の証明になります。
また、利益改善の一因は研究開発費の抑制であり、これは短期的な数字改善には有効ですが、過度なコスト抑制は中長期の競争力低下にもつながりかねません。黒字を維持しつつ、成長投資をどう再加速させるかが経営陣の腕の見せ所になります。
前回注目ポイント × 今回1Q決算の結果
① 売上高:前年・前期比での加速
-
結果:売上高は 1.27億円(前年同期比+17.0%、前期比+10.4%)
-
考察:前期からの増加幅は限定的ですが、前年からはしっかり伸びました。成長ペースは加速とまでは言えないものの、停滞感はなく、商用化案件の寄与が始まっている可能性があります。ただし、この規模では数千万円単位の変動で成長率が大きく振れるため、来期以降も安定的に増加できるかがカギです。
② 営業損益:赤字幅の縮小 or 黒字化
-
結果:営業利益 0.09億円(約900万円)の黒字化(前年同期 -0.16億円)
-
考察:ついに赤字脱却。ただし黒字幅は小さく、売上減少や開発費増で一発赤字転落リスクがある水準です。過去にも単発黒字はあったため、最低でも3四半期連続黒字が欲しいところ。経営陣がどこまで黒字を維持しながら成長投資を回せるかが試されます。
③ 受注残高・PoC案件数
-
結果:案件数・受注残高は公表なし。説明資料では「PoC→商用化」への移行が進行中と記載。
-
考察:数字の開示がないため定量評価は不可。ただし新プロダクト「Kudan PRISM」の正式リリースは、PoCを商用に変える武器として期待できます。2Q以降に商用案件数や受注残の開示があれば、未来の売上予測が現実味を帯びます。
④ キャッシュポジション
-
結果:現金及び預金 24.03億円(前期末比▲1.91億円)、自己資本比率 91.3%、有利子負債ゼロ
-
考察:資金繰りは極めて安定的で、現状のコスト構造なら10四半期以上の運営余力あり。手元資金は減少しましたが、これは開発投資や運転資金による自然な範囲。資金面では「夢を追う酸素タンク」は十分残っています。
総合評価
今回の決算は、「夢を追う企業」がようやく営業黒字化という小さな一歩を現実の数字に刻んだ四半期でした。
売上は伸びたが加速感はまだ弱く、受注残やPoCの定量情報が欠けている点は物足りません。
ただし、手元資金の潤沢さとKudan PRISMの投入は、今後の商用化スピードを押し上げる可能性があります。
「この黒字が続くのか」「PoCから商用化に何件移行するのか」の2点を次回以降の決算で必ず確認すべきです。
短期的な株価材料よりも、中期のストーリーの信頼性を見極める局面といえます。
ラック(管理人)の結論
私は現在、クダンを300株保有しています。今回の決算は、売上高1.27億円(+17.0%)、営業利益0.09億円と、ようやく営業黒字化を果たした点は素直に評価します。しかし額面は小さく、売上が1割減れば赤字に戻る水準。一発勝負の黒字化ではなく、継続的な利益体質への転換が何より重要です。
現金及び預金は24.03億円、自己資本比率91.3%、有利子負債ゼロと、資金繰りの安定度は抜群。資金面での“酸素タンク”は十分あるため、今後2〜3年の成長投資は耐えられます。この余力を活かして、PoCから商用化へのスピードを上げられるかが勝負どころです。
そして、本日同時発表された次世代デジタルツイン「Kudan PRISM」の正式リリース。株価に即効性がある材料ではないかもしれませんが、受注残や商用案件を積み上げるうえでの“突破口”となり得ます。特に物流・建設・製造など実需が大きい分野での早期導入が見られれば、中期の成長ストーリーが一気に現実味を帯びるでしょう。
私自身は、この決算だけで大きくポジションを動かすつもりはありません。ただし、次の2Q・3Qで黒字が継続し、PoC→商用化の実例が数字として出てくれば、株価が短期で跳ねなくても少しずつ買い増しを検討していきます。
これはあくまで私の決算分析と投資判断に基づく主観であり、投資は自己責任でお願いします。
コメント